PDCAはなぜ機能しないのか?OODAはなぜ実践的なのか?概念や意義にとらわれがちなマーケティング用語の中でも、かなり実践的に「運用サイクル」「データ活用」「統計的観点」の本質に、実践的な観点で解説されているのが本書になります。
著者について
著者・高橋威知郎氏は、内閣府やコンサルティングファーム、大手情報通信業などを経て、現在コニカミノルタ株式会社に勤める中、貫してデータ分析業務に携わっています。
この経歴が、デジタルマーケティングをWebプロモーションメインの経験にありがちなCVR至上主義とは全く違った、マーケティング・サイエンスの重要性をしっかり感じさせてくれる事に安心感がある著書です。
改めて、OODAとは何か?
マーケティングの現場では当たり前の用語となった「PDCA」ですが、データやすでに活動実績がある中では、まずは目の前のデータをキチンと観察するところから始める「OODA」に注目が集まっています。
OODAとは、
- 観察(Observe)
- 状況判断(Orient)
- 意思決定(Decide)
- 行動(Act)
の頭文字を取ったものです。この理論は米国空軍によるパイロットの意思決定に関して空軍大佐から提唱されたもののようですが、現在ではマーケティングの実践理論としても活用されています。
PDCAサイクルの場合、仮説は事業計画などの机上のものも含まれ、実行や検証の度に大本の意思に対する実践の壁が生まれがちです。これに対し、実行へのハードルを軽減する運用ループとして、OODAを活用することを丁寧に説明されています。
実践に基づいた行動指南
OODAのメリットを学べるよりも、本書の強みは、何より下記の三点にあります。
- Rやエクセルを用いた、スモールデータから始められる実践性
- 統計学に裏付けされた判断基準
- 他著に見られる概念を実践するための行動指南
1. Rやエクセルを用いた、スモールデータから始められる実践性
本書では、OODAにおける実践方法について、高価な環境を必要とせずに実践できる環境を用いて説明されています。
エクセルであればほぼ一般企業で使える環境ですし、場合によってはGoogleスプレッドシートなどでも置き換えが可能です。また、オープンソースの解析ツールであるRは、テクニカルなマーケターであれば使えるに越したことはありません。
そのような環境でOODAをループを回すための「最初の一歩」を、解説してくれています。
2. 統計学に裏付けされた判断基準
Rを用いている時点で当てはまることでもありますが、平均や分散、標準偏差や異常値の意味など、一通りを理解することにも本書は適しています。
統計学を用語や概念とせず、自身が使いこなせるようになるためのコツも掴むことができます。
3. 他著に見られる概念を実践するための行動指南
じつはここが一番大きなポイントだと感じました。世に多くのマーケティング指南書はありますが、殆どは、これまでの消費者行動論の焼き直しや、概念を具体的ンに理屈として述べているものがほとんどです。しかし本書は、明日にでもすぐ実践してみたくんあるような実践論に溢れています。
これだけの実践論をまとめられるのは、著者のこれまでの経歴による「本当の実践力」に裏付けされていると感じました。
マーケティング書には、様々なタイプがあります。その中でも、実践書となると大概は「ツールの使い方」をメインとしたものになりがちです。しかし本書のような「マーケティング論を実践する一歩」を記されたものは非常に少ないと思います。ぜひ手にとっていただきたい良書の一つです。
書籍情報
タイトル | 最速で収益につなげる完全自動のデータ分析 |
出版社 | クロスメディア・パブリッシング(インプレス) (2018/6/29) |
発売日 | 2018/6/29 |
単行本(ソフトカバー) | 328ページ |
ISBN-10 | 4295401986 |
ISBN-13 | 978-4295401988 |