デジタルマーケティングを行う上で必須である「オウンドメディア」。その運営目的や期待する効果にはいくつかのパターンがありますが、効果改善に向けた手法のパターンには、実はそれほど違いはありません。
ランディングページの直帰率を下げコンバージョン率を上げるためのLPO、入力フォームでユーザーを離脱させないためのEFO、そしてその際に効果を比較するためのABテスト。これら「CRO (Conversion Rate Optimation:コンバージョン率最適化)」を行うことは、現在のオウンドメディア運営では至極当然の行動となっています。
しかし、それ以前の問題として、そもそもそのオウンドメディアは本当にユーザーの心理に併せて設計されているでしょうか?そして、ユーザーニーズに合せることが、本当に事業への成果につながるのでしょうか?
ユーザーテストの実績に裏付けられたコンサルタントが語る納得の理論
「デジタルマーケティングの定石」の著者である垣内氏は、日本においてユーザーテストを用いたWebコンサルティングを牽引してきた株式会社ビービット出身です。その実績を元に、株式会社WACULに入社。WebコンサルティングをAIが支援する「AIアナリスト」を提供しています。
ユーザーにとってストレスのないWebサイトというだけでなく、しっかりと成果につながるコンサルティングを数多く行ってきた垣内氏だからこその理論が、全編にわたって展開されています。
人材紹介会社における事例
冒頭には、人材紹介会社におけるTOPページのレイアウト事例が欠かれています。私も10年以上、人材紹介会社のWebサイト運営に携わってまいりましたが、まさにこの事例のとおりの改善を行ってきました。
経営層や営業部門などからは「転職者は求人を探しているのだから求人検索しやすいようにすべきだ」との声が何度も上がりました。しかし、それでは人材紹介会社への登録を促すという点において、成果が上がることはありません。その定石を何度も説明すると同時に、「数字で説得するためのABテスト」を繰り返してきました。
業界経験が長い事とユーザー心理を知っている事は、確かにイコールと言えるかもしれません。しかし、そこからデジタルで成果を上げるということは、また別な特性を理解しないといけません。
デジタルを専門とするための仕事術
本書では、デジタルに限らずマーケティング人材が育ちにくい日本企業の文化についても触れています。その代表が「ジョブローテーション」です。
様々な部署を経験するジョブローテーションは、その企業の中でキャリアを構築するためには適した手法かもしれません。しかし、前述のような専門性は生まれにくく、また転職が一般化した社会においては、その個人のキャリア形成を阻害する要因ともなっています。
自分が何を専門としていきたいか?を明確に意識するには、本書に欠かれているようなデジタル特有の仕事術を実践できる必要があります。これまでに専門性を高めてきた方にも、その棚卸しとして本書を手に取るのも良いでしょう。
様々なモデルにおける定石を知る
冒頭で述べた通り、オウンドメディアには様々な種類があります。これに対し、ウェブ解析士公式テキストでは、2021年度より「MELSAモデル」を提唱しています。これは
- Media
- Ecommerce
- Lead Generation
- Support
- Active User
のそれぞれの頭文字を取ったものですが、本書においても完結にいくつかのパターンに分類した上で、それぞれの定石について説明されています。実践においてはこれが一番活用しやすいでしょう。ぜひ読んだ翌日から、担当するオウンドメディアについて見直してみたいところです。
最終的な定石は、自身が伸ばしたい分野での経験に基づくことになると思います。そのためにも、単に業界やユーザーを知るだけでなく、デジタル特性を改めて理解する事を目的に、本書を活用してはいかがでしょうか。
書籍情報
タイトル | デジタルマーケティングの定石 なぜマーケターは「成果の出ない施策」を繰り返すのか? |
出版社 | 日本実業出版社 (2020/9/10) |
発売日 | 2020/9/10 |
単行本(ソフトカバー) | 280ページ |
ISBN-10 | 4534058020 |
ISBN-13 | 978-4534058027 |