データを分析するにあたり、あなたはどのような手順でそれを実行しているでしょうか。深い洞察のもとに何らか答えを導くには、どうすればよいでしょうか。
その時にとても重要となる要素の1つが、「仮説を持つこと」になります。そしてそれを実践するプロセスを、「データ分析力を育てる教室」は分かりやすく説明してくれます。
言葉の定義もしっかり説明する、学術的な視点も持つ一冊
データ分析、と一言で言っても、データとは何を意味し分析もまたどういう意味を持つのか、の定義が曖昧のままでは、やるべきことや導かれる方向性が定まることはありません。日本における実務書の多くは、様々な用語を独自解釈し、独自の観点でストーリーが展開していくことが多々あります。
本書においては、データとは何か?情報とは何か?を(多少の解釈はありますが)確かな情報源を基に定義づけられています。また同様に、分析と解析という言葉の違いも説明した上で、データ分析では何をすべきかを説明しています。
とはいえ、データ分析における数字の取り扱いについては、絶対的に正確であるものとしていません。心理学的な要素などの影響も踏まえて「数字と事実には何らかの乖離がある」としているのも、本書の重要な要素かと思います。
仮説を構築し検証していくことが、データ分析の重要なプロセス
その上でデータ分析のプロセスを解説していますが、大切なのは「数字から何が言えるか」ではなく「仮説の構築と検証」のプロセスとしています。
これは、何らか解析に関する講義や資格講座を受けたことがある方は既知の事かもしれません。しかし実際に解析な必要となるケースでは、「数字から何が言えるか」を求められるシーンが今でも多々あります。
データマイニングやビッグデータ解析、機械学習などにおいては、特にその傾向が顕著であると感じます。何か人智を超えたところの正解を、機械やツールが与えてくれるような錯覚に陥っているのでしょう。
しかしながら、そのデータに関わる人自身が何らかデータへの考察なり仮説なりを持っていないと、ただの数字の分解や傾向を見るだけとなってしまい、「だから、何?」といった状況から抜け出すことはできません。
また、仮にこのプロセスを知っていたとしても、それを実践するために必要な考え方を身につけていないと、できるだけ正しい意思決定にはつながらなくなります。
本書では、その必要な考え方=論理的思考法について、身近な例を用いて説明してくれています。
数字の加工などには触れず、仮説にまつわるプロセスに特化
一点、データ分析におけるデータの取り扱いについて詳しい説明はありません。平均などの説明はありますが、それも仮説検証に有効という程度のものであり、あくまで仮説の構築と検証のプロセスに特化した理論書となっています。そのため、実際の数字をどう扱うか?を知りたい方には、あまり向いているとは言えないかもしれません。
しかしながら、データ分析において多くの人は、このプロセスで躓くことが多いように感じられます。理由は、前述の通りデータは正確なものではないのが前提であり、加工よりも論証や反証の方が重要かつ難易度が高いからです。
そのため、データ分析スキルを深めるために「数字を取り扱う技術をもっと知りたい」と思っている方も、思考のプロセスを極めることでそれが解決する可能性もあるでしょう。そのため、一度本書に触れてみるのも良いかもしれません。
書籍情報
タイトル | データ分析力を育てる教室 |
出版社 | マイナビ出版 (2022/6/28) |
発売日 | 2022/6/28 |
単行本(ソフトカバー) | 240ページ |
ISBN-10 | 4839976392 |
ISBN-13 | 978-4839976392 |