企業がデジタル経済社会を勝ち抜くための戦略として、DX ( デジタル・トランスフォーメーション ) 人材の育成に取り組む事例が増えています。その中でも、大手企業やITベンチャーを中心に「データサイエンティスト」の採用や育成意欲が非常に高まっています。
世界における「データサイエンティスト」の注目度
「Data Scientist」は、ビッグデータビジネスが本格化し始めた2013年ごろより検索され始め、一定の伸びで増加していました。そして日本工業大学が先進工学部に「データサイエンス学科」を新設した2022年、その検索数は更に急激に高くなっています。注目度は今後も上昇傾向にあると思われます。
ちなみに日本や欧州においては、「Data Scientist」という呼び方で検索がされていますが、米国や南アフリカ、豪州などでは「Data Analyst」の方が検索シェアは高いようです。
データサイエンティストの役割
データサイエンティストとデータアナリストとの違いについては、議論すべき点がいくつかあります。しかしながら、マーケティングを主軸として議論するならば、ビジネスにおける意思決定につながるデータ活用が最も重要となるでしょう。データに基づいた合理的な判断を行えるよう、意思決定者を”サポートする”のが、データサイエンティストです。
以前であれば経験や暗黙知といった属人的な判断が行われてきましたが、ビッグデータと呼ばれる大量な情報を解析することで、今まで以上に仕事の効率化や競争力強化を図ります。
求められるスキル
データサイエンティストとして活躍するには、ITスキルや統計解析の知見に加えて、対象となるビジネスや市場トレンドにも精通している必要があるため、非常に高度な人材と言われています。
- 事業を理解した上で課題を抽出し解決できる
- データを保存・加工・分析・運用できるようにする
- 統計学や機械学習・深層学習に関する理解を持ち、活用できる
データサイエンス分野における人材育成は、産業分野だけで課題解決できるものではありません。その専門性の高さや市場価値の高さから、産学官連携による人材育成が行われています。
データサイエンティストの年収
Indeedによると、日本におけるデータサイエンティストの平均年収は、「5,152,759円」となっております。
一見、市場で言われる相場より低い年収のようにも見えますが、「Webマーケティング」の平均年収や最高年収と比べると、やはり高い年収帯にあると言えるでしょう。
データサイエンティスト育成に関する取り組み
前述の通り、DXに取り組む企業の中でも、データサイエンティストの育成に取り組む企業が増えています。その中でも好事例とされる、ダイキン工業の取り組みを見てみましょう。
ダイキン工業株式会社「ダイキン情報技術大学」
2017年12月、ダイキン工業は「ダイキン情報技術大学」を設立しました。
空調事業という”モノ”を主業としてきた同社は、新興国メーカーなどが展開する”コト”の需要拡大に対応するため、そのために必要なAI・データ分析技術スキルを持った人材を「データサイエンティスト」と定義し、身につけるための環境を設けています。
- ビジネス課題を整理し、愚直に実行・解決する「ビジネス力」
- 情報処理、人工知能、統計学など情報科学系の知恵を理解し、使う「分析力」
- データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装・運用できるようにするデータエンジニアリング力
これらを習得するため必要な講座ラインナップを用意し、希望者から選抜された社員が受講できる仕組みとなっており、結果として、当初の計画を超えるデータサイエンティストを輩出することに成功しています。
https://www.kepco.co.jp/corporate/report/yous/4/active-kansai/article2.html
また他の企業においても、社員が主体的に学びに参加できる環境を用意している企業が増えてきています。データサイエンティストを始めとしたDXに必要な人材の育成には、職務としての場の提供だけでなく、組織による育成の仕組みづくりが重要であると思われます。
個人としても、自社にその環境がないことを理由にスキル習得を見送るのではなく、そのような機会を提供する企業で活躍できる様になるためにも、自己研鑽に励む意識が重要となりそうです。
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