オープンソースライセンスのマーケティングオートメーションツール(以下、MAツール)である「Mautic」は、無償で始められるということから、とりあえず試してみようと検討されている企業やユーザーも多いと思います。
標準の機能でも何となく利用できてしまうのはメリットでもありますが、Mauticでは「コンタクト」と呼ばれるリード管理において、導入時に設定しておいたほうがよいことをまとめてみました。
1. cron設定をする
Mauticの「基本セットアップガイド」でもインストールの次に記載されているため、忘れる方がいないと思いがちですが、そうでもないようです。
各セグメントへのリードの追加やキャンペーンの発動は、自動では行われません。何分おきに実行するか?の間隔を検討の上、忘れずにcron設定をしましょう。
仮に10分おきにコマンドを実行する場合は、下記のような記述になります。
*/10 * * * * /[Install path]/app/console mautic:segments:update --env=prod */10 * * * * /[Install path]/app/console mautic:campaigns:update --env=prod */10 * * * * /[Install path]/app/console mautic:campaigns:trigger --env=prod
2. カスタムフィールドの利用方針やデータの型を揃えておく
リード情報を管理する「カスタムフィールド」ですが、インストール時点で約40もの項目が既に用意されており、これでも十分でもあります。
しかし、カスタムフィールドにはよく見ると
- コア:リードの(主な勤務先の情報も含む)個人情報
- 仕事:企業の業種や売上高などの情報
- ソーシャル:リードのSNSアカウント情報
の3グループがあります。コアは削除不可のフィールドであり、エイリアス(変数名)も変更できません。かつ、メインメニューの項目でもある「会社」はコアグループに属しており、ユーザーと会社情報がコアに入り混じっています。
カスタムフィールドは作成が自由ではありますが、リード情報の構造が複雑にならないよう、どのフィールドでどのように管理しておくかは事前に決めておきましょう。
併せて、データタイプとして「選択」を利用するなどの型を決めておくことも大切です。他システムとの連携がある場合はもちろん、スタンドアロンで利用する場合でも、選択肢を用意して選ばせる、などのノンストレスなフォーム設計を行う上でも重要となります。
3. リード識別方法に「フィンガープリント」も利用する
Mauticでは、IPアドレスやCookieと併せて、「ブラウザフィンガープリント」を用いたユーザー識別が可能となっています。
[sc_Linkcard url=”https://www.webpla.jp/about-browser-fingerprint/”]「フィンガープリント」とは、様々な情報をハッシュ値(暗号化された数値)にした上で、その値同士を照合することで、同一かどうかを判断する技術です。
「ブラウザフィンガープリント」では、
- 利用ブラウザ
- OS
- 画面解像度
など、JavaScriptで取得可能な情報を組み合わせてハッシュ化することでユーザーを識別します。これにより、IPアドレスが違ったりCookieが削除されてもリードを特定でき、別リードとなる可能性が軽減されます。
フィンガープリントによる識別を有効にするには、右上の歯車メニューから「設定」>「トラッキング設定」と進み、フィンガープリント (日本語では指紋認証) による識別を有効にしてください。
フィンガープリントは、Cookieなどに有効期限を設ける「ITP」への対策手法と見る動きもあります。一方で、2020年1月には、Mozillaが開発する「Firefox 72.0」においてフィンガープリントの遮断機能をデフォルトとする等の対策も進められています。Cookieに限らず、ユーザー追跡に関する動向は、今後ますます加熱していくでしょう。
4. 閲覧ページタイトルの文字化けを防ぐ
※これは2019年から発生しているバグへの対応でもあり、GithubではIssueにもなっています。完全に技術対応です。
日本語でMauticを利用する場合、コンタクトが閲覧したページタイトルは、無理やりなローマ字表記で記録されてしまいます。
これを正しい日本語で表示させたい場合は、下記ファイルの該当箇所を修正してください。
app/bundles/PageBundle/Model/PageModel.php
// $safeTitle = InputHelper::transliterate($query['page_title']); ←この行をコメントアウト $safeTitle = $query['page_title']; // ←この行を挿入
この修正により、ページタイトルが正しく日本語で表示されるようになります。※修正前のデータは変更されません。
5. ポイントやステージなどの利用方針を決める
一般のMAツールでいうところの「スコアリング」機能に対し、Mauticの「ポイント」にはマルチスコアリング機能はありません。
代わりにMauticには「ステージ」という機能があり、ポイントとステージを組み合わせることで、リード管理を二次元化できます。
例えば、「セミナーリードとインバウンドリード」などをステージでわけた上で、Webコンテンツ閲覧によるポイントづけなどを行い、キャンペーンを別々に走らせる、といったことが可能になります。
数量的な変化とステージによる区分をうまく設計して、効率的にキャンペーンを実行しましょう。
MAツールは、あくまで「自分たちが行いたいリードジェネレーションを自動化するツール」です。導入しただけではどうにもならず、「MAツールは使えなかった」と判断されるケースもまだまだ少なくありません。
しっかりとした設計と運用の改善サイクルをとおして、MAツールを有効活用していきましょう。